突然ですが、「サドベリースクール」という学校をご存知ですか?
「学校」というと、私たちは小学校や中学校等の義務教育を連想することが多いですよね。
みんなが小学校や中学校に当たり前に通っているのが普通だし、自分たちも同じ道を歩んできたのだから、特別「学校」という存在に対して何か疑問を抱くこともない。
国としても「教育の義務」を憲法に明記しているぐらいだし、近頃は不登校の問題がニュースなんかで取り沙汰されているけれど、”あえて”学校に通わないのはおかしい。
このような結論に至る人が多いのかなぁと勝手にイメージしているのですが、一部の子どもや親御さんは「当たり前のように小学校や中学校に通うのはおかしいんじゃないか?」と思って、これまでの教育スタイルとは違う学校の形を模索しています。
その中で、「サドベリースクール」という学校が日本には存在します。
テストも時間割もなし、子どもと大人が対等に過ごし、みんなで学校運営をするという学校です。実は僕自身サドベリー(西宮サドベリースクール)に通っていて、その後スタッフとして3年ほど勤務していました。
当時の繋がりから、今回は自転車日本一周中に山梨県にある「八ヶ岳サドベリースクール」にお邪魔してきたので、せっかくだから中の様子を紹介したいと思います。
いやぁ、まさかここに自転車で来ることになるとは思っていなかったけどねw
八ヶ岳の麓、別荘地にある学校
はい、というわけで、以前からの繋がりで八ヶ岳サドベリースクールに呼んでもらったので、お邪魔させていただきます!
2年前に訪れて以来訪問していなかったので、到着した瞬間は感動しました。いやー、やっぱりいい場所ですね!
サドベリースクールの詳しい説明は省きますが、とにかくテストも時間割もないので、子どもたちは自分の好きな学びを自由に行います。
学校自体が民主的に運営されていて、子どもと大人が対等に過ごします。
いくら大人の方が人生経験があるからといって、「これは○○だ!」と命令することは出来ません。あくまで民主的に話し合います。
また、学校経営では当然重要となってくる年間予算、広報案等もみんなで話し合って決定します。
ルールも学校側で用意するのではなく、皆で話し合って決定します。また、作ったルールを無くすことも可能。
ここまで書いてなんとなく理解された方もいるかと思いますが、サドベリースクール自体は元々アメリカで始まった学校です。それを日本でもやっていると。
サドベリースクールは日本全国に8校あるんですが、八ヶ岳は別荘を借りて運営しているので、かなり校舎が広大なんですよね。
もちろん一般的な小学校の校舎には到底及びませんが、こういった学校って大抵は小さい民家で運営されているんですよ。
かなりの高所にあるので、冬場は薪ストーブで暖を取るそうです。
すでに9月末でも、夜間はかなり冷えます。外で寝たら凍死しますね・・・。
一般的な学校の枠に当てはまらないし、子どもたちが自分の興味関心に基づいて学びを行うので、教科書や参考書みたいな本から天体望遠鏡、ボードゲーム等色んな備品が置いてあります。
寄付してもらった物品も結構あるようです。
キッチン兼リビングみたいな部屋。
学校の校舎としても使えるけど、自分自身住みたいくらいに快適です。
アナログな備品だけでなく、専用のPCルームもあります。
ちなみにゲームをすることも可能なので、最近では世界的にブームとなっている「マインクラフト」が流行っているそうです。みんなマイクラやってた・・・!
ウッドデッキもあります。ここで昼寝をしたら気持ちいいでしょうね。
冬場は薪ストーブ用の薪が必要だし、時々BBQなんかもするそうで、デッキの一部のスペースに道具が置かれていました。
ここでBBQしたらどれだけ楽しく出来るだろうか・・・。
庭で簡単に野菜も育てているそうです。
ただし画面の上半分は隣の土地で、学校で育てているのは手前のとうもろこし。雑草が生えまくって大変なことになっていますw
畑はみんなで管理しているのかな?
右下にあるのは、ピザなんかを作れるかまど。なんか料理を作りたいですね!
それにしてもおかしいなあ、2年前に来た時はここまで雑草まみれじゃなかったんだけど・・・w
冬場の快晴の日だと、ウッドデッキから富士山を眺めることが出来ます。
今の季節はまだかすんで見えないけれど、2年前に来た時は富士山を見ながらコーヒーを飲んでいたことを強烈に覚えています。
だって、それだけ素敵な環境だったんだもの・・・。
それなりに庭も広いので、外で活動することも出来ます。
ただし、「どのような活動をするか?」はその日の生徒の気分なんかによって変わるので、当日どのような活動が行われるか大人にはわかりません。
大人側から見れば「こんな素敵な環境だから、外で遊んでいる子が多いのだろうな!」と思うんですが、そんなことはないようですw
ああそう、「時間割やテストもない場所で、子どもたちは何をしているの?」という疑問を大抵の人が抱くかと思うのですが、本当に多種多様です。
開校時間の6時間を使ってなんでも出来るので、他の生徒やスタッフとお喋りして1日を過ごすかもしれないし、1日ゲームをしていることもあります。
釣りに行く生徒もいるし、自作パソコンの作成に取り組む生徒もいる。
「それだけで本当にいいの?」と思われるかもしれませんが、サドベリーは「自分の興味関心に応じて、好きなことをどんどん掘り進めていく」という方針で運営されているので、この場では周囲に何か言われることはありません。
最終的な進路はどうなるかわからないし、好きなことだけを追求することがいいかどうかは誰にもわかりません。
ただ少なくとも言えるのは、必ずしも教科書で出てくるような勉強だけを続けていても、将来安泰かどうか、また幸せかどうかなんて誰にもわからないということ。
人生の1つの選択肢として、一般的な教養を身につけるのではなく、好きなことを追求する道もあるということ。それだけは言えるかなと思います。
全ての決定をミーティングで行う
サドベリースクールは、子どもも大人も「ミーティング」であらゆる決定を下します。
今回、「せっかく来たので、ある程度の期間滞在したいなぁ」と考えていました。
スタッフさんとの話し合いをした結果、どうやら10/2(金)までは滞在出来そうだなぁという結論に至りました。
ただし、いくら元サドベリースクール関係者といっても無断で見学することは出来ません。
大人だけの話し合いで決定も出来ず、きっちりとミーティングで見学可能かどうか、また宿泊もしたかったのでそれも可能かジャッジをしなければいけません。
ミーティングの風景はこんな感じ。参加したい人が集まって議論します。
ということで、11時から始まるミーティングにて議題を提出しました!
今回の議題は5つあったんですが、その中でも中心的な議題は「僕(よねすけ)が10/2まで滞在・宿泊する、労働する代わりに宿泊代をタダにしてほしい」というものと、生徒発案の「開校時間を現状のものから1時間早くしたい」というもの。
最初に簡単な報告がいくつかあって、次に自分の議題へと順番が回ってきました。
簡単に自己紹介と議題の内容を説明して、意外にあっさりと決定w ちなみにこの議題が否決されたら、渋々帰るしかありません。よかったw
次は、生徒発案の「開校時間を早めたい」という議題。元々は10時~16時で開校しているのを、1時間早めて9時~15時にしたいと。
「みんな家庭の仕事が忙しいし、ここまで送ってもらわないと(アクセスの問題で)来れない。開校時間をちょっと早めたら、親が仕事をする前に送ってもらうことが出来る。
開校時間そのものを長くすると、スタッフの人件費が増えるからダメ。逆にあんまり早くしすぎると、遠くから来る人がしんどい。だからこの時間がいい」とのこと。なるほど~。
ただ、この開校時間変更はみんなに影響があること。ミーティングは任意参加だし、そもそも今日来ていない子もいるので、みんなの意見を聞いてから決定することに。議題は保留になりました。
日によって議題の内容は変わってくるけれど、簡単なゴミ捨てという議題から、今回の開校時間変更までみんなで話し合って決めます。
普段自分の権限で全てを決定している人から見れば、相当面倒くさい作業に見えるんじゃなかろうかw
あくまでサドベリーでは、このプロセスが重要でしょ、という方針で運営されています。
学校というと、教師が権限を持って授業が進められるのが一般的ですよね。
ですがこの「サドベリースクール」では、生徒が主体となって行動します。つまり、個々人で好きなことを好きな時間に行います。
よって頻繁にカオスな状況になるんですが、そもそも「授業」とか「学び」とは何か?という問いからこの学校は始まっているんですよ。
大人側だけが都合の良いように学校運営を行うのではなく、そもそもみんなで必要だと思うものを決めていく。
原始的かもしれませんが、問いを発するためにも必要な教育だと思います。元関係者が言うのはおかしいかもしれませんけども。笑
どんな教育が良いかは誰にもわからない
サドベリースクール自体は、少なくとも日本で大衆に受け入れられているわけではありません。アメリカでさえ、かなりリベラルな教育として受け取られているようです。
それもそのはず、これまでの「学校で体系的な知識を学ぶ」という思想の反対側にいるからです。
今の日本の教育は、決められた授業を決められた時間に一斉に行い、最終的に高学歴という”就職のため資格”を取得する目的で学校に通っている人が多いかなと思います。
どんな教育がいいのか、僕にはわかりません。確かに就職さえしてしまえばある程度は安泰かもしれないし、そこに対して教育費という投資をすることも理に適っているのかもしれない。
ただ、その教育思想に必ずしも合致しない人はいるでしょうし、そもそも「学び」というものは興味関心に応じて進めていくものだったはずです。
「安泰になるために生きているんじゃない」という人もいるでしょうし、「とにかく自分の好きなことをして生きてゆきたい!」という人もいるでしょう。
「どんな教育がいいか、誰にも判断できない」からこそ、サドベリーのような学校も必要なんじゃないかなーと思います。実際、数は少なくともそのような学校を求めて来る人もいるので、これからも続いていくでしょうね。
元サドベリー出身者からすれば「これが当たり前」なんですが、一般的な尺度から見れば相当カオスな学校だと思いますよ。頭がほぐれそうw
というわけで、以上「久しぶりに八ヶ岳サドベリースクールを訪問してみた!」でした。もうしばらく学校に滞在させていただきます!
「これ面白いな!」と思った方がいたら、ぜひサドベリースクールの情報を調べてみてください!
参考までに、情報を張り付けておきます。サドベリーを初めて知ったという方が大半だと思いますが、よければどうぞ!
サドベリースクールの紹介
サドベリースクールの理念と、各スクールへのリンクはこちら→デモクラティックスクール総合情報サイト
プロブロガー・イケダハヤトさんが書いた記事→よしもとばなな&本田健が語る:「サドベリー教育」を知っていますか
サドベリースクールOBが更新しているブログ→サドベリースクールの卒業生たちは今
自身のサドベリーでの経歴について
当時のインタビュー記事→社会の課題解決に「教育」の力で立ち向かう若きイノベーター
スタッフ時代に書いていたブログ(日常や教育についての考え方など)→よねすけブログ
サドベリースクール関連の本
アメリカにある「サドベリーバレースクール」の本→世界一素敵な学校―サドベリー・バレー物語
日本のサドベリースクールを紹介している本→自分を生きる学校―いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール