長野県下伊那郡、阿南町。県道沿いの山深い場所に、自給自足生活をしながら暮らす一家がありました。
聞けば「森を開拓して、自分で一から家を作り、自給自足で畑を耕し鶏を飼いながら過ごしている」らしい。
長野県には「自給自足のカリスマ」がいることで有名だけれど、これまた面白そうな家庭にお伺いする機会をつくることができた。
というわけで、喜んで小椋さん一家にお邪魔しにいきました。ここの生活、楽しすぎるー!
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長野県の秘境スポット
長野県高遠町にある馬と暮らす一家「うまや七福」を出発して、名古屋方面へ南下。
「阿南町」という静岡県との県境付近にある町から県道を辿ると、目的地である家がありました。静岡県との県境にあると言っても、そこは秘境並みに山深い場所。
近くの川もビックリするぐらい綺麗!これは・・・訪ねる季節を間違えたな。。。
周辺にはほとんど民家もなく、山道でひたすら迷ったあげく、道中凄まじい雪に見舞われたほど。(笑) 恐ろしや、長野県。
長野県は自転車で移動するにはあまりに不毛な地帯だけれど、その分秘境みたいな場所がちらほらありますよね。
頑張って目的地にゆこう。
そこは山奥の小さな「村」でした。
川に見とれ、雪に見舞われながらもようやく目的地に到着!
その場所は、民家というより「小さな村」のような雰囲気でした。これからどんな生活が始まるのかな!楽しみすぎる。
ちなみに、今回お世話になる小椋家は20年ほど前にこちらの場所へ移住し、百姓をしながら3人の子どもたちと一緒に暮らしておられるそうな。
まず到着して目に入ったのは、原木シイタケの菌床。丸太を交差させ、菌を植えて培養するらしい。
いやー、ちょうど「キノコ狩りに行きたい」と思っていたところなんですよね。
一家の子どもたちとキノコを探していると、早速キノコを発見。
これはなめこ。おぉー!!!
こちらは、巨大なシイタケ。原木で自家栽培をすると巨大になるそうです。
市場でこんな大きいキノコは見たことないな。
なんと、滞在1日目から採れたてのキノコを頂けることになりました。うん、美味すぎた。
ちなみに、本来ならこの季節にこれほどのキノコは採取出来ないそうですが、今年はちょっと変らしい。
暖冬なんだね。
有機鶏卵ビジネス
初日から子どものように散々はしゃぎまくってましたが、これだけではまだまだ終わらない。
次は、小椋家の収入の大黒柱だと言う「鶏卵」の収穫に行きました!
「鶏卵・養鶏ビジネス」と聞くと、大規模な敷地でギリギリまで鶏を詰め込み、工場のように大量生産し続ける・・・というイメージがありました。主にマ○ドナルドの影響ですが(笑)
小椋家では「有機養鶏」で卵を出荷しており、200~300羽程度の飼育で鶏もあまりストレスを感じにくい環境で育てているみたいです。その方が事業として、健全ではあるよね。
小屋内を探し回っていると、産みたての卵を発見!「産みたて」なので、ほんのり暖かい。
生命の息吹を感じる・・・!
朝と夕に一度ずつ卵を集め、おおよそ50個程度収穫することが出来ました。
全体の収入としては「副業」レベルだそうですが、手間を考えると「副」にはなりづらいんだとか。とはいっても、食料は自給自足で調達しているので生活していけるそう。
「生活コストを低減させられる」という田舎のメリットを大いに活用されているということですね。素晴らしい!
水道は山から引き、ガスは使わず「火鉢」で
小椋さんの家では、極力食料・エネルギーを自給してコストを下げる暮らしをされています。
都会の人には考えられないと思うんですが、ここの地域では「山から水を引いてこれる」んです。つまり、水道代は無料!しかも水がおいしい!
ただあまりに田舎な場所だとガスを引いてくることができず、「プロパンガス」を利用することになるんですが、費用が非常に高い。月に5,000円もかかってしまうこともあるんだとか。
しかーし!田舎の「ツワモノ」たちは常に予想の斜め上を行くものです。
なんと小椋家では、ガスは一切使用せず「火鉢」を利用して料理を作っています。さすがにこれは・・・凄すぎる。当初はガスを使用されていたものの、途中から使わなくなったそうです。
田舎には欠かせない「薪ストーブ」が主要な熱源になるんですが、常に火を焚いているわけではないので、火鉢も頻繁に利用されていました。
都会だったらレンジでチン!で終わっちまうことも多いもんなぁ。
小椋家では現在お風呂を建設中のため、近くに住む祖父母の家に貰い風呂に行くそうですが、昔ながらの五右衛門風呂も完備されていました。というわけで、喜んで入ってみることに。
もちろん、お風呂の水は山から引いてきたもの。薪は敷地内にある木を切って。すべて自給で賄っているという面白さ。
肝心の五右衛門風呂は、楽しかったけど寒かった。(笑)
次は夏に来て、じっくり入ろうと思います。冬はあかんな。
森を開拓して、家をつくった。
ここで少し、昔の話を。タイトルにもある通り、この家は何もないような状態の敷地を開拓し、小椋さん自ら建築されているんですよ。
(当時撮影された写真)
今でこそ立派な家と小屋があるけれど、当時は何もなかった。長い歳月を費やして自ら作業小屋を建築し、家を建て、畑を耕して作物を作ってきた。
ただのよそ者には「完成された光景」しか見えづらいものだけれど、僕には想像もつかないような作業を通して今の生活がある。いや、本当に何から何まで凄すぎます。
情報化時代の今だからこそ、その凄さを余計に実感します。どちらも楽しい要素はあるのだけれど、生み出したものが目に見えにくい世の中だからこそ、「世の中に物理的に成果を残していく」ことも意識していきたい所存。
当時は田舎暮らしなんて考えられなかった
ここで少しだけ、小椋さん自身のことも聞いてみました。
—
ーどうして長野県に移住して、自給自足生活を始めようと思ったんですか?
たまたま。(笑)
今でこそ農的な暮らしや自給自足生活がテレビで取り上げられていたりするけど、当時はバブル真っ盛りでそんな暮らしなんて考えられなかった時代。
大阪の大学に在学している頃、たまたま新聞で「このままの世の中でいいのか、バブルの終わりは見えている」というような形で、今の時代に反対しているような若者が愛知県の山奥に移住して百姓をし、さらに移住者が集まっているという記事を見た。
それを見たとき、「あっ、これだ!」も思って自分も通うことになり、百姓をしながら様々な農家を訪れるうち長野県にも頻繁に訪れることになって、この場所で生きていくことにした。
—
ーーー今でこそ「田舎暮らし」がブーム化しているけれど、小椋さん自身はそれ以前、「田舎暮らしなんて考えられない時代」に長野県に移住して、そして今も家族を養われている。
「地域に溶け込む」ことはそれなりの大変さがあったようですが、今は地域の人にも協力してもらいながら、最低限のコストで生活できているようです。
これには、小椋さん本人や奥さんが、今回は都合で取り上げられなかった「町に存在する全校生徒10名以下の学校の存続」に相当尽力されている、なんていう背景もあるようなのですが・・・。
(もちろん、その他にも地域の活動には積極的に参加されています。)
イメージだけで「田舎暮らし」を選択する人もいるなかで、そもそも「田舎暮らしなんて頭がおかしい」と言われる環境化であえて移住されてきた人の生き様を見ることは、今後の暮らしを考えていくにあたってより重要になっていきそうです。
「想像できない面白さ」を中心に暮らしをつくってゆく
ということで、小椋家には一週間近く滞在させていただいたんですが、都会人には毎日が新鮮で仕方がありませんでした。楽しすぎる!
自給自足の暮らしは、「便利」という概念を超越したところに面白さがあるような気がします。
かつては仕方なしに手間のかかる自給生活を送っていたけど、現代では便利な生活の恩恵を受けたうえで「あえて」自給生活を選択する人が増えています。
一度それを体験したものにしか、見えない景色があります。
なんでも予測できる生活ではなく、全く想像のつかないものをあえて選ぶ。消費し続ける暮らし・遊びではなく、自ら手をかけて生み出してゆく暮らしを選択する。
今後、機械化・IT化・管理化が進めば進むほど、反発するようにそのような暮らしを選択する人が増えるのではと思っています。
これからどのように「暮らし」を創っていくのか。何を「美徳」として、何を「信念」として生活を組み立てていくのか。
今は「変革」の時代だからこそ、かつての自給自足生活、田舎生活なども参考にしながら、これからの暮らし・シゴト・教育の形を考えてゆきたい。
今回受け入れてくださった小椋さん、ありがとうございました!本当に楽しかったー!